「影響力の武器」は、アメリカを代表する社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニ氏が提唱する心理学に基づいたアプローチ方法です。
このアプローチ方法は、大きく6つのパターンが存在し、6つのパターンを用いることで誰でも人の心を動かすことができます。
今回は「人が行動を決める6つのパターン」を具体的事例と共に要約します。
この6つのパターンは、営業やマネジメントなど、ビジネスに必ず活きる内容です。
それでは、メンタリストのDaigoさんや詐欺師やコピーライターも重要視する悪魔のテクニックを解説していきます。
このブログを書いている人🐤
- 名前:青雉(あおきじ)
- 経歴:大学卒業後、新卒で少数精鋭の中小企業に就職。社員数は全国でわずか40名弱ながら、所属営業マン全員が年収1000万円を超えるエリート集団の中でひたすら揉まれる。
人間としての生活は許されず、過酷な日々を耐え抜くも1年半で退職。その後、社員数1000名のベンチャー企業に転職。前職の過酷な営業経験が活かされ、入社初月で「新人王」、半年で役職に就く。2年後には管理職になり、現在は役員を目指して慌ただしい日々を邁進中。
背景
著者のロバートは、物心がついた頃からずっと、説得上手な人々に丸こまれてきた。
その経験もあり、「承諾の法則」に興味を持つようになった。
例えば、何か頼みごとをするのに、ちょっとしたやり方の違いで成功したり、失敗したりするのはなぜかなど。
本格的に研究を始めた結果、人の「承諾」に影響を与えるものがいくつか発見され、これらを総じて「影響力の武器」と呼んだ。
そして、一つの結論に至った。
それは、承諾させるテクニックは無限にあるが、その大部分は”6つのカテゴリー”に分類できるということであった。
「人が承諾を決める悪魔の6パターン」
- 「影響力の武器」:返報性
- 「影響力の武器」:一貫性
- 「影響力の武器」:社会的証明
- 「影響力の武器」:好意
- 「影響力の武器」:権威
- 「影響力の武器」:希少性
それぞれの原理は、自動的で愚かな承諾、すなわちよく考えずにイエスと言ってしまう傾向を引き出す力に繋がる。
①「影響力の武器」:返報性
結論:人には暗黙のルールがある。それは「他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならない」というルール。
理由:人は、恩恵を受けると何か借りができたような気分になるため。(受けた恩義に必ず報いなければならないという義務感)
ストーリー:
数年前、ある大学教授が、ちょっとした実験を行った。
クリスマスカードを、まったく知らない人々に送ってみた。
結果、クリスマスカードの返事が山のように来た。
返事を出した大部分の人は、その大学教授が何者なのか調べもしなかった。
クリスマスカードを受け取った。だから何も考えずに返事のカードを出したのである。
最終結論:人は何かをもらうと、お返しを「せずにはいられない」気持ちになる。結果、無償で与えるだけの機会は少なくなり、「取引」という形に発展する。要求を出す前に、ちょっとした親切をするだけで、要求が通る確率はぐっと上がることになる。
②「影響力の武器」:コミットメントと一貫性
結論:人は、自分がすでにしてしまったことと一貫していたいという欲求がある。
理由:ひとたび決定を下したり、ある立場を取る(コミット)と、自分の内からも外からもそのコミットメントと一貫した行動をとるように圧力がかかるため。
ストーリー:寄付依頼の話。
消費行動の研究者ダニエルハワードがある研究を行った。
彼は、テキサス州の住民に電話をかけ、飢餓救援協会の者が、お宅までクッキーを売りにいっても構わないか尋ねた。
これだけのことしか言わなかった場合、18%の同意しか引き出せなかった。
しかし、冒頭に「お元気にお過ごしですか?」と入れ、クッキーを売りにいっても構わないか尋ねたところ、注目に値する事象が発生した。
第一に、電話を受けた120人のうち108人が好意的な挨拶(「まあまあです」「上々です」など)を返した。
第二に、その中の32%が、クッキーの訪問販売に同意した。
第三に、訪問販売に同意した人の89%が、訪問を受けたときに実際にクッキーを購入した。
最終結論:自分が下した重要な決断の正しさは、その選択の前提条件が満たされなかったとしても、何が何でも信じようとする。またある一度ある立場をとると、その状態を継続しようとする。有効なのが、段階的にコミットメントを強めていくことで、より大きな要求を飲ませる方法である。最初は小さなものでOK。要求を通すことではなく、コミットメントのきっかけを作ることに意義がある。
➂「影響力の武器」:社会的証明
結論:人は他の人たちが何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断する。
理由:多くの人がとっている行動なのであれば、それと反対の行動をとるよりも、間違いを犯すことが少ないため。
ストーリー:
バーテンダーは、よく、店を開ける前に何枚かのドル紙幣をチップ入れに混ぜておく。
教会の受付も、同じ理由で募金箱に前もってお金を入れておく。
またキリスト教福音派の牧師は、聴衆の中にサクラを仕込んでおく。
ナイトクラブの経営者の中には、店にはまだ客を入れる余地がかなりあるのに、入場制限をして外に長い行列を作らせる人がいる。
最終結論:社会的証明は2つの条件下において最も強い影響力を持つ。
1つは不確かさ。人は自分の決定に確信を持てないとき、あるいは状況が曖昧な時、ほかの人々の行動に目を向け、それを正しいものとして受け入れようとする。
2つ目は類似性。人は自分と似た他者のリードに従う傾向がある。
多くの人が要請に応じた、あるいは応じていると告げることによって、ある人がその要請に応じるように促すことができる
④「影響力の武器」:好意
結論:人は自分が好意を感じている知人に対してイエスという言う傾向がある。
理由:人は、よく知っていて、好意を感じている知人に対してノーと言いづらいため。
ストーリー:
デトロイトにジョー・ジラードという男がいる。
彼は車のセールスの記録で「世界で最も偉大な自動車セールスマン」としてギネスに載っている。
ギネスに載るほど、車を売った彼が用いた手法は限りなくシンプルだった。
それは、公正な価格の提示と、この人から買いたいと思うような人格を表すこと。
「自分が気に入ったセールスマンと、納得できる価格。」この2つが一緒になれば、だれでも車を買ったのであった。
最終結論:好意に影響する要因は大きく5つある。
1つ目は、身体的魅力。身体的な美しさが社会的相互作用の中では有利に働く。
身体的魅力はハロー効果を生じさせ、才能や親切さや知性といったほかの特性の評価も高めている。
2つ目は、類似性。自分と似た人に好意を感じ、そのような人の要求に対してはあまり考えずにイエスという傾向が強い。
3つ目は、称賛。あまり露骨だとかえって反感を買うが、お世辞は一般的に好意を高め、承諾を引き出しやすい。
4つ目は、接触回数の増加。接触回数が増えることによって、好意は促進される。
これは不快な環境ではなく、お互いが快適な環境のなかで接触が起こる場合に当てはまる。
5つ目は、連合。自分自身と望ましいものを結びつけることによって、好意を引き起こす。
好ましいものと自分は結びついている、好ましくないないものと自分は切り離されていることを他者にアピールする。
➄「影響力の武器」:権威
結論:権威者に対する服従は、一種の短絡的な意思決定として、思考が伴わない形で生じる。
理由:権威者は優れた知識と力を持っているのが普通なので、そうした人の命令に従うことは適応的な行為であるという心理が働くため。
ストーリー:
マーティ・シーンはテレビ番組『ザ・ホワイトハウス』で大統領を演じた俳優である。
彼は、アメリカのTV番組で司会者に、現在の大統領の行動の妥当性を執拗に質問された。それに対し、彼は律儀に自身の考え方を述べた。
しかし、もちろん彼は政治家ではないし、実際の政治に関わる活動もしたことがない素人であった。
最終結論:重要なのは中身ではなく外見である。
ある実験で、効果のある3種類のシンボルが証明されている。それは「肩書き、服装、自動車」である。
それらのうちどれかを所有している個人は、より多くの相手に言うことを聞かせることができる。
⑥「影響力の武器」:希少性
結論:人は、機会を失いかけると、その機会をより価値があるものとみなす。
手に入れにくいものはそれだけ貴重なものであるから、手にとってみたくなるという心理が働くため
ストーリー:
バージニア州に住む19歳の女性の話。
クリスマスに27歳の年上男性と出会った。
特別タイプではなかったが、交際するようになった。
しかし、そのうち彼の年齢のことで両親に反対されるようになった。
家族が二人のことをうるさく言うにつれて、どんどん彼への愛が深まっていった。
最終結論:希少性の価値は情報にも適用される。ある情報のアクセスが制限されると、人はそれを手に入れたくなり、またそれに賛同するようになる。
希少性の原理を最もよく適用できると考えられる条件が2つある。
1つ目は、ある品が希少となった場合。このとき希少なものの価値は一層高まる。
すでに制限されたものより、新たに制限されるようになったものの方により価値を置く。
2つ目は、他人と競い合ってる場合。人が希少性の高いものに最も強く引き付けられるのはこのとき。希少性の圧力に対して、冷静さを失わずに理性で対抗するのは難しい。それが思考を困難にしてしまうような情動を引き起こす性質を持っているからである。
【影響力の武器】:オススメ本3選
①影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか [ ロバート・B・チャルディーニ ]
②影響力の武器 戦略編 小さな工夫が生み出す大きな効果 [ スティーブ・J.マーティン ]
➂影響力の武器 実践編[第二版] 「イエス!」を引き出す60の秘訣 [ ノア・J・ゴールドスタイン ]
まとめ
「影響力の武器」とは、「人が無意識に承諾をしてしまう6つの条件」の総称です。
- 1つ目の武器:返報性(まずは与える)
- 2つ目の武器:一貫性とコミットメント(約束をさせる)
- 3つ目の武器:社会的証明(自分だけ契約していないと匂わす)
- 4つ目の武器:好意(近づいて仲良くなる)
- 5つ目の武器:権威(オーラを出す)
- 6つ目の武器:希少性(限られた人しか契約できないと伝える)
以上の6つの武器を組み合わせることで、ラジオの電源をつけたら(カチッ)、音が流れる(サー)かのように、人が無意識に承諾をしてしまうようになります。
※人が無意識に行動を決めてしまう効果を心理学上ではカチッサー効果と言います。
これは一種の洗脳であり、カルト教団が例外なく取り入れている悪魔級の強力な武器です。
もちろん営業やマネジメントにも活かすことができ、TOP営業マンになるためや、強いチームを作るためには必要不可欠な要素と言っても過言ではないでしょう。