今回もGoogleの社員教育方法について紹介と解説を行っていきます。
さすが、Googleというだけあって社員教育のノウハウも洗練されており、有益な情報が多くあります。
今回はマネージャー編ということで、現在管理職に就かれていたり、今後管理職になりたい方向けの内容となります。
▼チームマネジメント編に関しては下記を参考にしてください。
目次
⓪優れたマネージャーの要件
早速ですが、まずはマネージャーの定義…いやGoogleが掲げる優れたマネージャーの定義から入っていきます。
Googleの答えは、以下に示す10の行動が行えていることだと定義しています。
▼Google 優れたマネージャーに共通する10の行動規範
①良いコーチである
②チームに任せ、細かく管理しない
③チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮しインクルーシブ(包括的)な環境をつくる
④生産性が高く結果を重視する
⑤効果的なコミュニケーションをする(人の話をよく聞き、情報を共有する)
⑥キャリア開発をサポートし、パフォーマンスについて話し合う
⑦明確なビジョンや戦略を持ち、チームと共有する
⑧チームにアドバイスできる専門知識がある
⑨部門の枠を越えてコラボレーションを行う
⑩決断力がある
たくさんありますね(笑)。
では1つずつ解説していきます。
今回は【⑨部門の枠を越えてコラボレーションを行う、⑩決断力がある】のみ省き、解説をしていきます。
①良いコーチである
良いコーチであるとはどういう意味でしょうか?
良いコーチは、教育にコーチングスキルを用い、フレームワークにGROWモデルを採用しているとされています。
▼コーチングに関してはこちらを参考にしてください。
フレームワーク?GROWモデル?と思われる方もいるかもしれませんが、フレームワークとは、共通して用いることができる考え方や、枠組みのことを指しています。
GROWモデルとは一言でいえば教育のモデルです。もちろんGoogleで採用されている教育のフレームワークで、コーチング のスタイルを”チームメンバーのニーズ”と”コーチングを受ける側の受け入れ度合い”にあわせて柔軟に調整が行われています。
では、GROWモデルとは、どのような【フレームワーク】なのでしょうか?
それは、下記の通りです。
Goal(目標の明確化)求めるものは何か
Reality(現状の把握)何が起こっているか
Option(選択肢の検討)何ができるか
Will(意思の確認)何をするか
それぞれの頭文字をとり、GROWモデルと言われているのです。
このGROWモデルに基づいた質問をするために、できるだけ頻繁に1 対 1 ミーティングを実施するのです。(30分~1時間が理想と言われています)
チームメンバーとの個別ミーティングを頻繁に実施するとなるとかなりの時間を費やすことになりますが、早い段階で問題を特定してフィードバックや指導を行う機会にもなるということです。
②チームに任せ、細かく管理しない
「細かく管理しない」とはどういうことでしょうか??
良いマネージャーは、「細かく管理」をせず、成長をさせるためにチームに権限を与えているのです。
そしてマネージャーはチームをサポートするだけです。具体的には、
- 自由にやらせつつも必要に応じて助言をする。ある Google 社員は、マネージャーが自分のチームをサポートする様子を次のように語っています。「目的に向かって自由にやらせてもらえますが、口を挟むべきタイミングを心得ていて、うまくいかない問題は必要以上に追わないよう助言してくれます」。
- チームに対する信頼を明確に示す。チームメンバーに権限を与え、自分を通さずにプロジェクトに関する決断を下せるようにします。マイクロマネジメントを避け、チーム内に信頼と責任の文化を浸透させます。
- チームの成果を周囲に伝える。マネージャーは、チームが達成した成果を自分の上司を含むその他の人にも伝えるようにします。
優秀なマネージャーは、自分がチームのために働いているのであり、チームが自分のために働いているのではないことを理解しているのです!
さらにマイクロマネジメントを避けるために信頼関係の構築にも努めています。具体的には、
- 意見を求める。意思決定プロセスにはチームにも関わってもらいます。
- アイデアや知見を求める。マネージャー自身の仕事のやり方を改善して効果を高める方法についても意見
- 肯定的なフィードバックを行い関係を強化する。リーダーシップを発揮するなど、チームメンバーが何か優れた貢献を行ったときに、その成果を称え、肯定的なフィードバックを行います。
- リーダーを育てる。仕事をチームメンバーに任せ、特定のプロジェクトに関する権限を与えます。こうすることで、自分が組織にとって価値ある存在だと感じさせることができます。成果を上げているチームメンバーにプロジェクトを担当させて個々の仕事のリーダーにすると、マネージャーの負荷が軽減されるだけでなく、チームメンバーが活躍できるチャンスにもなります。
- チームメンバーの能力を伸ばす。どのようにしたらそれぞれのチームメンバーが自身の強みを生かして成長し、組織に貢献できるかを探ります。責任の大きい仕事を割り当てることでチームメンバーを成長させれば、メンバーのやる気を引き出すことができます。そのメンバーのことを高く評価し、能力を認めているというマネージャーの気持ちが本人に伝わるからです。仕事を割り当てたら、その理由とメリットについて説明しています。
- チームメンバーにコーチングする。メンバーを成功に導くためのコーチングに焦点を当てます。チームや会社の目標だけでなく、個人的なキャリア目標も達成できるようにサポートしてください。1 年後、5 年後に各チームメンバーがどうなっていたいかを把握し、成長と成功に必要なものを提供します。
- オープンなコミュニケーションを推奨する。マネージャーとチームメンバーの双方が、目標、プロジェクト、アイデアについて、明確に話し合えるようにします。チームメンバーが自分の意見を言いやすく、新しいアイデアを試しやすい環境を作ります。
- メンバーへの信頼を示す。メンバーが毎回細かいことをマネージャーに確認せずにすむよう、プロジェクトを完了させるために必要となる権限を与えます。
効果的なマネージャーほど権限や責任、意思決定を個人やチームに委ね仕事を任せる傾向があります。任せる範囲を定め、チームメンバーをサポートして業務を確実に遂行するためには、以下のポイントがあります。
- 目標を見据える。最終目標は何か。最終目標を達成するにはどのような結果となればよいのか。どの部分を任せられるか。
- 自身を見つめる。任せられない仕事の種類とその理由を考える。自分が得意、不得意な仕事は何か。
- 適任者を見出す。職務遂行のためのスキルを有するのは誰か。この仕事が担当者のスキルアップにどの程度重要か。
- 委任する。担当者と次の点について話し合います。
- 業務の概要を説明する。重要性、現在のリソース、任せる理由などについて説明します。
期待される成果については明確に伝えますが、仕事をどのように完了すべきかについて具体的に言及するのは避けます!ゴールは伝える、方法は任せるということです。質問や意見には真摯に対応し答えるようにしましょう。委任した仕事はが完了したら感謝の念を伝えることも重要です。
③チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮しインクルーシブ(包括的)な環境をつくる
優れたマネージャーは仕事だけではなく、個人的な面もサポートします。
例えば、昇格や異動、キャリアチェンジ、スキルの習得など。部下のキャリアを話合う上で、Googleで採用されてるのが先ほども登場した GROW モデル。
Goal: 目標の明確化
チームメンバーがキャリア形成の先に見据えているものを特定します。
- 「1 年後、5 年後、10 年後の自分はどうなっていると思いますか?」
- 「収入や現在のスキルの制約がないとしたら、どのような仕事に就きたいと思いますか?」
- 「興味、価値を置くもの、原動力となっているものは何ですか?」
Reality: 現状の把握
チームメンバーの現在の役割とスキルを理解します。
- 「現在の業務で最もやりがいを感じること、あるいは、ストレスを感じることは何ですか?」
- 「現在の業務はやりがいがありますか?能力を伸ばせていますか?どうしたらさらにやりがいを感じられますか?やりがいのない業務は何ですか?」
- 「自分の長所と短所について、他の人からどんな指摘を受けたことがありますか?」
Option: 選択肢の検討
目標と現状のギャップを埋めるための方法を複数考えます。
- 「以前話し合った目標達成のためのスキルを磨くのに、今できることは何ですか?」
- 「自分を伸ばすために、どのような仕事やプロジェクトに挑戦したいですか?また、どのような経験をしたいですか?」
- 「選択肢として、どのようなネットワークやメンターシップがありますか?」
Will: 意思の確認
現状から目標に向かうための実現可能なステップを特定します。
- 「何を、いつまでに行いますか?」
- 「役に立つリソースは何ですか?目標達成のために役立つスキルは何ですか?」
- 「どのような支援が必要ですか?自身のキャリア形成について、マネージャーやリーダーからどのようなサポートを受けたいと考えますか?」
④生産性が高く結果を重視する
優れたマネージャーは、チームが具体的な成果を上げられるようサポートすることを重視しています。
マネージャーの重要な役割の 1 つは、チームメンバーに起こりうる障壁を予測し、取り除くようにサポートすることです。
結果を重視して、生産性を維持する
Google の効果的なマネージャーがチームの生産性を維持し、結果を出すために行っていることは以下です。
生産性重視のための8か条
- チームには常に結果を重視させる
- チームによる優先順位付けをサポートする
- 障壁を取り除く
- 誰が何に取り組んでいるかを明確にする
- 懸命に働き、チームの指針となる
- チームの傍らで懸命に働く
- 問題点を把握する
- 専門知識とスキルを活かして問題解決をサポートする
⑤効果的なコミュニケーションをする(人の話をよく聞き、情報を共有する)
優れたマネージャーは優れたフィードバックを行います。
フィードバックの注意点
Google ではフィードバックの際、下記について考慮されています。
①質の高いフィードバックを提供する。
- 「各チームメンバーに同じ質のフィードバックを提供しているか?」
- 「チームメンバーのプロジェクトを、彼らと同じくらい理解しているか?」
このような問いを自分に向けた Google のあるマネージャーは、離れたオフィスにいるチームメンバーとの 1 対 1 のミーティングの時間を通常よりも長くとることにしました。その結果、時間をかけて有意義な話し合いを行うことができたそうです。
②基準に一貫性を持たせる。
- 「チームメンバーへの期待や、予期する成果について、メンバーに説明したことはあるか?」
- 「成功の基準をチームメンバーごとに設定したことがあるか?」
基準が明確であれば、公平にチームメンバーの評価ができます。仮にそれらの業績や能力が別のチームメンバーのものだったら、自分がどのように評価していたか考える必要があります。無意識的な偏見に注意し、一貫した明確な基準を適用することが求められます。
③思い込みを避ける。
- 「思い込みに基づいて行動していないか?」
★たとえば、子供がいるチームメンバーを出張が多い仕事から外していないか?
思い込みが、チャンスを与える妨げにならないように注意する必要があります。仕事は個人に与えるか、または、チーム全体に与えて誰が担当するかの判断はチームに任せられています。またこれに関連して、伝えてもできないかもしれないという理由で、率直なアドバイスを控えることも避ける必要があります。
特定のグループに対する無意識的な固定観念のせいで、思い込みができてしまっている場合もあります。重要なのは、メンバー全員に対して、一貫したコミュニケーションを取るように努めることです。
④自分を正しく理解してもらう。
- 「自分の言いたいことが正確に伝わっているかどうか?」
★フィードバックを伝えた相手との相違点が多いほど、言いたいことが意図したとおりに伝わっていない可能性が高くなります。
自分のメッセージには、思っているよりも多くのフィルタや文化的先入観に基づく思い込みの影響を受けています。こちらが言ったことをチームメンバーがどのように理解したか聞かせてもらい、必要に応じてもっと明確に伝える必要があります。
⑥キャリア開発をサポートし、パフォーマンスについて話し合う
優れたマネージャーはキャリア開発もサポートします。
内容は【③チームの仕事面の成果だけでなく健康を含めた充足に配慮しインクルーシブ(包括的)な環境をつくる】のパートと同じで、GROWモデルに基づいたヒアリングを事項を1on1の際などに確認していきます。
キャリアアップやスキル習得に関して、話し合う場を確実に設け、サポートを怠らず徹底する必要があります。
⑦明確なビジョンや戦略を持ち、チームと共有する
優れたマネージャーは明確なビジョンを設定しています。
ビジョンを設定する3つの目的
①チームの成功に不可欠
魅力的なビジョンをチーム内で共有することはチームの成功に不可欠。1 つのビジョンを持つことで全員がこれに集中し、同じ方向に向かって進むことができる。逆に、ビジョンがないと集中力が削がれ、チームとしての勢いがなくなり、大きな打撃となる。
②メンバーは、自分たちがどこに向かっているのかを知る必要がある
チームとしての明確なビジョンを持つということは、チームメンバーの誰もがチームの目標、進捗、成功のイメージを把握していること。
③チームがやるべきことを決める際に役立つ
評価の高いマネージャーはビジョンを伝える際、口頭または書面で、明確、簡潔、率直に伝える。
明確なビジョンがあれば、何を優先させ、どこで妥協するかを決めることができる。意思決定の際、それをビジョンと関連付ける必要がある。
ビジョンを設定するための5つの要素
チームがなぜ存在するのか、そして、何をどのように達成しようとしているのを表すもの。
①コアバリュー
チームの基盤となる信念を意味し、チームのパーパスとミッションとを導き出す。
②パーパス
チームの存在理由とチームが組織全体に与える影響。もし、自分たちのチームが存在しなかったら、どのような影響があるか考えてみる。
③ミッション(何を)
達成しようとしている目標を表す。
④ストラテジー(どのように)
ミッション達成のために将来にわたって展開する手段を意味する。
⑤ゴール(OKR)
ストラテジーを短期的で達成可能な目標へと落とし込んだもの。チームの取り組みを一つにまとめる働きがある。
⑧チームにアドバイスできる専門知識がある
専門スキルを持つマネージャーは、チームメンバーに寄り添ってその力を発揮することにより、信頼できるアドバイザーとなります。
これによって、自らのスキルを向上し続けられると同時に、マネージャーが単なるリーダーではなく、チームのいちメンバーであるという重要なメッセージを伝えることもできます。
効果的なマネージャーは、「自分はチームのために働いている」のであり、その逆ではないことを自覚しています。ある Google 社員によると、マネージャーは
「成果を上げるために必要なことを全員が行えるようサポートしてくれます。それと同時に専門分野に関する知識もとても豊富なので、必要があればチームが問題を解決するのを手助けしてくれます。」
と答えています。チームとともに仕事に取り組むことで、マネージャーは自分の知識をチームに示すことができ、自分のスキルをアップデートし続けることにもつながります。
最も重要なことは、メンバーの仕事に加わることでマネージャーが単なるリーダーではなく、チームに参加しているというメッセージを伝えられるということです。
マネージャーがチームのために働いているのであり、チームがマネージャーのために働いているのではないということを忘れてはならないということですね。
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②リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法【電子書籍】[ 安藤広大 ]
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➂管理職1年目の教科書 外資系マネジャーが絶対にやらない36のルール【電子書籍】[ 櫻田毅 ]
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まとめ
優秀なマネージャーに必要なマインドは、マネージャーはチームのために働いているのであり、それを絶対に勘違いしてはならないことだということが分かりましたね。
職場の心理的安全性を高め、部下の成長にコミットさせていくためにコーチングスキルを使い、権限を与えていくことも重要です。
明日からのマネジメントに活かせる部分があれば幸いです。
https://rework.withgoogle.com/jp/
引用サイトです。こちらの情報をより分かりやすくまとめています。